災害時の心の変化…身近な人にしてあげたい、
誰にでもできる「こころのケア」について

災害に見舞われた被災者は、大きなストレスを受けます。

もし身近な人が災害のストレスによって、一見異常に見える言動を示したら…“極端な出来事に遭遇したときに起こる正常な反応である”と理解し、そっと寄り添いましょう。

特別なことをする必要はありません。「何かしてあげたい」「声を掛けようかな」と思ったら、ぜひ躊躇せず行動してみてください。

「急性期(発災直後から数日)」の反応

ストレスの程度は被害の深刻さや被災者自身の性格・考え方などによって異なりますが、身体、思考、感情、行動などにその反応が現れてきます。

ストレス反応は時間の経過とともに変化。

災害発生直後から数日間(急性期)は、めまい、震え、心拍数や血圧の上昇、発汗などが起きます。

物事を合理的に考えることができなくなり、集中力や記憶力も低下。また茫然自失に陥り、不安や恐怖が強く、怒りと悲しみでいっぱいになることもあります。

行動も硬直化し、イライラしやすく、また非難がましくなったり、コミュニケーション能力が低下したりすることも。

危険な状態に直面し身体が緊張状態になる「闘争・逃走反応」という状態になることも少なくありません。

「反応期(1~6週間)」の反応

災害発生後、1~6週間(反応期)は、抑えていた感情が湧き出してくる時期。これは無力感の克服につながる心の動きでもあります。

つらい出来事がよみがえってきたり、悪夢を見たり、緊張が高まりイライラや孤独感が増し、しばしば抑うつ的になることも。

生き残ったことに救われた気持ちと同時に、罪悪感が襲ってくることも少なくありません。

「修復期(1カ月~半年)」の反応

悲しみや淋しさが募り、不安を感じることもありますが、混乱した感情が少しずつ修復されはじめる時期です。

つらい出来事が思い出されると苦しくなりますが、徐々に気持ちがおさまり、日常への関心や将来への見通しに目を向けていけるように。

また、突然記憶がよみがえったり、災害を思い出す話題や場所を避けたりします。自分が自分でないような感覚にとらわれることも珍しくありません。

時期と反応は目安であり、必ずすべての反応が起きるというわけではありませんし、順番が決まっているわけでもありませんが、これらの反応があるということを覚えておくことは、被災者ケアにきっと役立つでしょう。

誰にでもできる「こころのケア」

「こころのケア」は特別なことではありません。

まずは、そばにいる。ただ同じ空間にいるだけでも、十分にこころのケアはできます。そして様子を見て「調子悪いの?」など、さりげなく声を掛けてみましょう。

世間話をする、お茶をそっと出す、といったことでもOK。大切なことは「気づいているよ」ということを伝えることです。

もし被災者のほうから話はじめたら、うなずきながら話をよく聞き、こちらからは問いかけをしません。話の良し悪しを判断してしまうのもNG。

難しいことが必要なのではなく、自分にできることをするだけで良いのです。強制することはなく、被災者本人が自然に元の状態に戻るのを待つことが大切になります。